2013年04月11日

行商

 新作ショートショート(?)です。


                行商

 ひとりの若者が竿竹売りのもとでしっかりと修行し、地元に戻ってきた。
「た~けや~、さ~おだけっ」――発声法も間の取り方も完璧にマスター。彼が売り歩こうとしているのは竿竹ではなく竹の子だが、語呂は似ているし、全く問題なかろう。
 ミニバンに竹の子を積み、いざ出発! ――意気揚々と行商を開始したものの、なぜだかさっぱり売れない。
(初日からこれでは先が思いやられるなあ)
 がっくりしつつも公園の脇にクルマを駐め、
「た~けや~、た~けのこっ。た~けのこはいかがっすか~」
 とやっていると、ひとりの男が笑いながら話しかけてきた。
「おみゃあさん、何とろくしゃあことやっとりゃーす。ほんなもん欲しがるやつ、おるわけにゃあて。おみゃあさんこそ、たーけだがや」

【蛇足】
 名古屋の人なら一度は思いついた(あるいは耳にした)ネタだろうと思います。
 唐突に、これを作品化したらどうなるんだろ、と思い、書いてみました。
posted by 高井 信 at 10:34| Comment(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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