
私がブログで書いたこともある作家や作品についても数多く言及されていて、筒井康隆と同じ作品に感銘を受けたかと思うと、何だか嬉しくなってしまいます。
私が古今東西を通じて最高の小説と思っているデュマ『モンテ・クリスト伯』には――
>とにかく面白くて面白くて、明け方になるまで夢中になって読んだ。
うはあ。私と全く同じです。
筒井康隆が読んだのは新潮社・世界文學全集版(全2巻)とのこと。
>この本の上巻のカバーはシャトー・ディフの断崖から布袋に入れられたダンテスが
>海に投げ込まれようとしている場面、下巻のカバーはメルセデスがモンテ・クリスト
>に我が子の助命を嘆願している場面である。
幸いなことに、私はこの本を所有しています。書棚から取り出してきました。(第1巻は昭和2年10月25日、第2巻は昭和3年8月15日発行)


幼き日の筒井康隆はこの絵を見て、胸を躍らせたのですねえ。
『モンテ・クリスト伯』となれば、私は必然的に黒岩涙香『巌窟王』を連想します。涙香関連では、ボアゴベ『鐡假面』も採り上げられていました。涙香翻案の『鐡假面』を江戸川乱歩がリライトしたものです。

> そしてこの本も怖かった。鉄仮面を取り、なかば髑髏のような
>顔になった男を、森の中でヒロインが目撃する衝撃のシーンは、
>これまた梁川剛一の怖い見開きの挿絵であり、この挿絵と、
>この男の正体の意外性こそがこの本をいつまでも記憶していた
>理由だ。

とまあ、こんな具合で、『漂流 本から本へ』について書き出すと、止まりません。ほかにも書きたいことは山ほどありますが、これくらいにしておきます。
この本の読み方は、人によって全く違うでしょうね。それぞれの読書体験と合わせ、それぞれの読み方ができるのです。
筒井康隆ファンのみならず、本が好きな方すべてにお勧めします。
ふと思えば、このブログは「高井信のつくり方」的な側面もありますね(笑)。
【追記】2013年7月9日
江戸川乱歩『鐵假面』大日本雄辯會講談社(46)を買いました。残念ながら1950年刊のハードカバーではありませんが、挿絵は1950年版と同じ梁川剛一です。
くだんのシーンを探しますと――


本文には――
> あゝ、その顔は人間か髑髏か。
> いや、髑髏よりなほ恐しい生きてゐる骸骨だ。
とあります。筒井さんが書かれているのは、もしかしたら本文のことなのかも。