たまたま古書店で目にしたのですが、正直なところ、こんな本が出ていたことすら忘れていました。私の個人的な感覚ですが、この『日本沈没』のベストセラーによって、日本におけるSFの認知度がぐんと高まったのではないか、と感じています。それまでは、「SFが好き」と言っても、「SFって何?」と問い返されることも多々ありましたし、ひどいときにはSMと勘違いされることもあったのですが、以降はそういうことはなくなりました。
日本SF史上、エポック・メイキングな作品と言えるでしょうね。



カッパ・ノベルス『日本沈没(上)』には新聞の切り抜きが挟まっていました。紙名は不明ですが、1976年7月5日の夕刊に掲載されたもののようです。『日本沈没』は刊行からわずか3年後に英訳されていたのですね。これもすっかり忘れていました。


昨今では、文庫や新書で出た本を何冊か合わせてハードカバーで再刊行するというケースも多いですが、当時は珍しかったような気がします。書棚を見回して目につくのは、平井和正『狼の紋章/狼の怨歌』早川書房・日本SFノヴェルズ(73)くらいです。この作品も夢中になって読みましたねえ。懐かしいです。
【追記】
ふと思い出しましたので、書いておきます。

半村良『平家伝説』角川文庫(74)の解説(権田萬治)には、「この作品は文庫として日本では初めての書き下し出版ということになる」と書かれています。
「初めて」ということに関しては、たとえば平井和正『狼の紋章』ハヤカワSF文庫(71)も書き下ろしだったはずで、疑問符がつきますが、まあ、そういう時代だったのです。
その日は、ちょうど眉村さんの仕事場のマンションで勉強会がある日でした。
眉村さん宅は、地下鉄御堂筋線昭和町。私は神戸ですから、途中、梅田の紀伊国屋で買いました。
この時、集まった人の多くが持ってきていて、眉村さんもふくめて、みんな「これは売れる」といったことをおぼえています。
私は、よく覚えてはいないのですが、ちょっと評判になってから買ったような気がします。