2009年07月22日

『怪奇日蝕』

 日本じゅうが注目した皆既日食ですが、皆さん、ご覧になりましたか?
 あいにく私が住んでいる名古屋は曇天で、太陽を拝むことができませんでした。ずっと空を眺めていれば、雲の隙間から欠けている太陽を観測することも可能だったようですけれど、そんな根気はなく……。

 さて。
 皆既日食と聞いて、古くからのSFファンの多くは式貴士の短編「怪奇日蝕」を想起されたのではないでしょうか。私もその1人です。
 一昨日、宮崎惇さんのことを書きました。私は商売柄、たくさんの作家の方々と交流があります。先輩と後輩だったり同年代だったり、それぞれ付き合い方は違いますけれど、基本的には作家と作家の関係です。しかし宮崎さんとはそうではなく、作家と愛読者という関係でした。
 実は式貴士さんとも、そんな関係だったのです。
 SF専門誌「奇想天外」1977年9月号に掲載された短編「カンタン刑」を読んで、熱烈なファンになりました。ほんと、すごい衝撃を受けたのですよ。>「カンタン刑」
式貴士サイン.JPG 式さんと初めてお目にかかったのは、1979年6月10日、東京の三笠会館本店で行なわれた“式貴士氏「カンタン刑」出版記念の会”の会場でした。それまで式さんとはまるっきり接点はありませんでしたが、あっちこっちで「式貴士、大好き!」と言い回っていたお蔭で、会の案内状をいただいたのです(その案内状は、いまも大切に保存してあります)。
 緊張しましたねえ。嬉しかったですねえ。憧れの式さんとお話ができ、持参した処女短編集『カンタン刑』にサインもいただきました。それが右の写真で、「未来の“式貴士後援会々長”高井信様」なんて書かれています。私もその気満々だったのですが、タイミングが悪かったというか、数ヵ月後に私自身も「奇想天外」でデビューするということになり、ファンクラブ結成は幻のものとなってしまいました。式さんには申しわけなかったと思います。
 もちろん個人的なお付き合いは続き、しょっちゅう会っていましたし、新宿のゴールデン街へ連れていってもらったことも何度かあります。ほんと、お世話になりましたねえ。
 式さんも宮崎さんと同様、若くして亡くなられ、何とも言えない想いです。 通常でしたら、ここで著作リスト、となるわけですが、式貴士研究サイト「紅星人」「式貴士と私(仮)」に詳細な書誌データが掲載されていますので、生前に発行された単行本(ハードカバー)だけ紹介することにします。

『カンタン刑』CBS・ソニー出版(79)
『イースター菌』CBS・ソニー出版(79)
『連想トンネル』CBS・ソニー出版(80)
『吸魂鬼』集英社(80)
カンタン刑.JPG イースター菌.JPG 連想トンネル.JPG 吸魂鬼.JPG
『虹のジプシー』CBS・ソニー出版(80)
『ヘッド・ワイフ』CBS・ソニー出版(81)
『怪奇日蝕』CBS・ソニー出版(81)
『なんでもあり』CBS・ソニー出版(82)
虹のジプシー.JPG ヘッド・ワイフ.JPG 怪奇日蝕.JPG なんでもあり.JPG
『天虫花』CBS・ソニー出版(83)
『アイス・ベイビー』CBS・ソニー出版(84)
天虫花.JPG アイス・ベイビー.JPG
 以上です。
 式さんの短編は、星新一さんも絶賛されていました。処女出版の『カンタン刑』は、初版からわずか15日後に出た再版では、星さんの推薦帯になっています。
        カンタン刑(星新一推薦帯).JPG
          *               *              *
 式さんが仕事の内容によって、さまざまなペンネームを使い分けていたことは有名です。私も、目につけば買っていました。たとえば、以下のような本です。
ミステリ博物館.JPG へんな学校.JPG トイレで読む本.JPG 女教師犯す.JPG
女教師犯す(推薦).JPG 間羊太郎や小早川博はともかく、蘭光生名義の本には参りましたねえ。書影を掲載した『女教師 犯す』二見書房・サラノベルズ(81)が、たぶん蘭光生としては初めての著作と思います。もちろん新刊で買い、そのあとも新刊が出るたび、10冊近くは買い続けたんですが、さすがにギブアップしてしまいました。式さんに感想を求められても、読んでもいませんから、何も答えることができず……。
 そうそう。『女教師 犯す』には面白い趣向が凝らされています。カバー袖の推薦文を書いているのが「SF作家・式貴士」なんですね。
 というわけで――
 今回の皆既日食で、久しぶりに式さんのことを思い出しました。日食は観測できませんでしたが、よかったと思います。
 先に紹介した2つのサイトは、本当に素晴らしいです。式さんのファンとして、こういう方がおられることは非常に嬉しいですね。
 式貴士を読んだことがない方がいらっしゃいましたら、こういったサイトを参考にして、1冊でも読んでみてください。
 おっと。最後に書くようなことでもないですが、もちろんショートショートも書かれています。

【追記】12月7日
SM博物館.JPG「書影を掲載した『女教師 犯す』二見書房・サラノベルズ(81)が、たぶん蘭光生としては初めての著作と思います」と書きましたが、下のコメントにも書いたように、これは間違いで、蘭光生名義の初めての著作は『SM博物館』三崎書房(72)です。
 昨日、この本を古本屋で見かけたので購入しました。レアな本のようですから、存在を知って半年足らずでゲットできてしまったのは、かなりの幸運ではないかと思います。もちろん、悩むこととなく気楽に買える金額でした。
 書影を掲載しておきます。
posted by 高井 信 at 15:35| Comment(1) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
訂正です。
 蘭光生名義の最初の本は『SM博物館』三崎書房(72)のようです。この本は昨年、河出i文庫で再刊されました。
Posted by 高井 信 at 2009年07月26日 13:09
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