
夏目漱石の連作掌編「夢十夜」はまさに名作。ショートショートかどうかということになると微妙な感じもしないのではないのですが、傑作掌編であることは間違いないでしょう。
「夢十夜」に捧げるオマージュというかパロディというかパスティーシュというか、そんな作品は数多く書かれていて、本書もその1冊です。阿刀田高「夢一夜」など、計10編を収録。
『ショートショートの世界』では、以下のように書きました(150~151ページ)
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「夢十夜」は非常に有名な作品で、さまざまなアンソロジーに収録されていますし、パロディ作品もたくさん書かれています。都筑道夫「夢十夜」、星新一「夢20夜」、北杜夫「夢一夜」、吉行淳之介「夢三つ」、横田順彌「夢じゅんや」、井上雅彦「異形の夢十夜」……。H・P・ラヴクラフト「夢魔十夜」もありますが、これはあくまでも邦訳タイトルであり、「夢十夜」のパロディではないでしょう。
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書誌情報がなく、不親切ですね。すみません。
その他の作品(長編やエッセイは除く)も含めて、簡単な書誌とともに、ここでまとめておくことにしましょう。
◎星新一「夢20夜」:『つねならぬ話』新潮文庫(94)に収録。*単行本版には収録されていません。
◎都筑道夫「夢十夜」:『グロテスクな夜景』光文社文庫(90)に収録。
◎吉行淳之介「夢三つ」:『菓子祭』潮出版社(79)/角川文庫(81)に収録。
◎北杜夫「夢一夜」:『夢一夜・火星人記録』新潮社(89)/新潮文庫(92)に収録。
◎横田順彌「夢じゅんや」:『悲しきカンガルー』新潮文庫(86)に収録。
◎井上雅彦「異形の夢十夜」:『1001秒の恐怖映画』ぶんか社(97)/創元推理文庫(05)に収録。
◎井上雅彦「花十夜」:『髏漫』ハルキ・ホラー文庫(04)に収録。
◎H・P・ラヴクラフト「夢魔十夜」:『別冊幻想文学⑩ ラヴクラフト・シンドローム』アトリエOCTA(94)に収録。
◎芦原すなお『新・夢十夜』実業之日本社(99)/創元推理文庫(07)
◎やしろかづを『猫十夜』文遊社(87)
◎夏樹静子編『悪夢十夜 現代ホラー傑作選第4集』角川ホラー文庫(93)
以上。
きっちりと調査しているわけではなく、記憶を頼りに書棚を眺めて目についた作品だけ(すなわち私が所有している本だけ)ですから、ほかにもたくさん書かれていると思います。ご指摘いただければ幸いです。
あと……。「夢一つ」(あるいは「夢ひとつ」)という作品を読んだような気がするのですが、誰の作品だったか思い出せません。可能性のありそうな本を何冊か取り出して、目次をチェックしたものの見当たらず……。ネット検索してみたら大畑靖という人の作品がヒットしましたけれど、知らない作家ですので、これではないことは確かです。もしかすると私の勘違いで、そんな作品はないのかもしれません。