私、本をたくさん買います。ほとんどは古本ですが、とにかくたくさん買います。買う本の数が読める本の数よりも圧倒的に多いです。買った本をすぐに読むなんてことは滅多にありません。もちろん、少しは目を通しますが、通読するのはいつになるか……。ちゃんと読んでから内容紹介をするのがいいとはわかっていますが、そんなことをしていたら、時期を逸するのは確実です。
というわけで、気になる新刊があれば、読んでなくても紹介することにしました。
ブログ初の新刊紹介は、ロード・ダンセイニ『二壜の調味料』ハヤカワ・ミステリ(09)です。

「二壜の調味料」、これは本当に傑作と思います。初めて読んだのはいつだったのか、全く覚えていないのですが、おそらく江戸川乱歩編『世界短篇傑作集3』創元推理文庫(60)に収録された「二壜のソース」だったと思います。いやあ、驚きましたねえ。この作品によって、それまで私がダンセイニに抱いていたイメージは完全に覆されました。
遡って、ダンセイニ初体験はいつだったのか、記憶をまさぐってみると――
これまた、はっきり覚えていないのですが、「幻想と怪奇」誌の創刊号(1973年4月号)に掲載されていた「女王の涙を求めて」である可能性が非常に高いです。「幻想と怪奇」誌は創刊から購読していましたし、当時は買った本や雑誌は隅から隅まで読んでいましたから。
初めて著作を買ったのは、たぶん『ペガーナの神々』創土社(75)で、その次は長編『エルフランドの王女』月刊ペン社・妖精文庫(77)あたりでしょう。2冊とも楽しく読んだ記憶はありますが、私の嗜好とは少しずれていて、「ダンセイニ、大好き!」とまでは至りませんでした。
ダンセイニの幻想短編は、確かに短いものが多いのですが、ショートショートとは別の世界の産物であると思います。ショートショートではないから駄目、なんてことはないのですが、やはり私は若いころから、短い小説にはショートショートっぽさを求めていたのかもしれません。
しかし、先にも述べましたように、「二壜のソース」――これを読んだのは『ペガーナの神々』や『エルフランドの王女』から何年も経ってからと思いますが――で、私のダンセイニ観は一気に変わりました。まさに、私好みの作品だったのです。
読んでいない段階ではあれこれ言うのもおかしな話ですが、今回の『二壜の調味料』には私好みのダンセイニがいっぱい詰まっているものと思います。なるべく早く読みたいものです。
ご参考までに、ダンセイニの邦訳短編集リストを挙げておきます。
『ダンセイニ幻想小説集』創土社(72)
『ペガーナの神々』創土社(75)
『魔法の国の旅人』ハヤカワ文庫FT(82)
『短篇集 妖精族のむすめ』ちくま文庫(87)
『ヤン川の舟唄』国書刊行会・バベルの図書館(91)
『世界の涯の物語』河出文庫(04)
『夢見る人の物語』河出文庫(04)
『時と神々の物語』河出文庫(05)
『最後の夢の物語』河出文庫(06)
『二壜の調味料』ハヤカワ・ミステリ(09)
* * *
昨日はもう1冊、デニス・ジョンソン『ジーザス・サン』白水社(09)も買いました。

これもなるべく早く読まないといけないのですが、いや、その前に、あれも、これも……。
そんな具合で、積読本が増えていくのです。ふう……。
でも、近年訳された河出文庫の作品集などを読むと、こうした非ファンタジー作品でも、ダンセイニしか書けない味が出ているのは確かで、その意味で、思っていた以上に、間口の広い作家なのかもしれません。
ポケミスの『二壜の調味料』も、期待に違わぬ面白さでした。
そうですよねえ。ダンセイニというと短絡的に幻想小説の巨匠となってしまいますが、決してそれだけの作家ではないですよね。
>ポケミスの『二壜の調味料』も、期待に違わぬ面白さでした。
貴ブログ、拝見しました。素早い読了、丁寧な内容紹介、見習わなければならないと思いますが、私には無理です(苦笑)。
思い出話と書誌情報でお茶を濁してしまいました。新刊紹介と言いつつ、今後もこんな感じになると思います。