星新一公式サイト・初出リストには書籍収録のデータも記載されています。おおむね正しいのですが、現物を確認していない作品に関しては、それが本当に未収録なのか、あるいは改題の上収録されているのか、今ひとつ自信がありません。未収録作品集を出すのであれば、もっともっと精度を高めて、限りなく正確なデータにしなければ。
そんなわけで……。
以下、昨年2月の話です。
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当時、初出リストのデータは次のようになっていました。
◇宇宙をわが手に(だれかさんの悪夢)――悪循環「文藝春秋 漫画讀本」1960年8月号
◇宇宙をわが手に――「轟(川崎車輛PR誌)」1968年8月号
細かい情報も入れつつ書きますと――
・「文藝春秋 漫画讀本」1960年8月号に「宇宙の霊長たち」なる大タイトルのもと、「一方通信」「見なれぬ家」「探険隊」「悪循環」「最高の作戦」計5編が掲載。
・「宇宙通信」「探険隊」「最高の作戦」の3編は『人造美人』新潮社(1961年2月28日発行)に収録。(「一方通信」は「宇宙通信」に改題)
・「悪循環」は「宇宙をわが手に」と改題の上、『だれかさんの悪夢』新潮社(1970年10月15日発行)に収録。
・「見なれぬ家」は単行本未収録。
・「轟(川崎車輛PR誌)」1968年8月号に「宇宙をわが手に」が掲載。これは現物未確認。
――とまあ、こういうことです。
この流れを見ると、「轟」はPR誌で「文藝春秋 漫画讀本」は商業誌ということもあり、「轟」掲載の「宇宙をわが手に」と「悪循環」は別の作品と考えるのが妥当と思えますが、確実にそうとは言い切れません。星さんの場合、ある雑誌に掲載された作品が別の雑誌に再掲載されるケースがけっこう多いのです。
ゆえに――
(1)「文藝春秋 漫画讀本」1960年8月号に「悪循環」を掲載。
(2)文章に手を入れ、「宇宙をわが手に」と改題の上、「轟(川崎車輛PR誌)」1968年8月号に掲載。
(3)「宇宙をわが手に」のタイトルで『だれかさんの悪夢』新潮社(1970年10月15日発行)に収録。
――ということも、充分に考えられるのです。とすると、「轟」掲載の「宇宙をわが手に」は未収録ではなくなるわけで……。
う~~~~む。悩ましい……。
というようなことをこの企画のメンバー(星マリナさん、山本孝一さん、和田信裕さん)に伝えたところ、またたく間にマリナさんから返事がありました。――「轟」の「宇宙をわが手に」と『だれかさんの悪夢』の「宇宙をわが手に」は同じ話と確認済み。
おお、そうか。では、リストはどう修正しようかな。
ちょっと考え、次のように――
◇悪循環――「文藝春秋 漫画讀本」1960年8月号→宇宙をわが手に「轟(川崎車輛PR誌)」1968年8月号→宇宙をわが手に
◇宇宙をわが手に(だれかさんの悪夢)――悪循環「文藝春秋 漫画讀本」1960年8月号→宇宙をわが手に「轟(川崎車輛PR誌)」1968年8月号
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とまあ、このような作業を2年間、ずっとやっていたわけです。毎度、こんなにあっさりと解決すると楽なのですけれど、当然、そういうわけにはいかず……。
大変な面も含め、こういうのが楽しいと言うと、山本さんや和田さんは「うんうん、わかるわかる」。しかしマリナさんは「?」なのでした(笑)。言うまでもなく、マリナさんが健全です。書誌フェチに囲まれて、大変だったでしょうねえ。
【追記】
一連の作業を経て、初出リストは初公開の時点(2011年12月)と比べて、格段に精度が上がりました。作品数もかなり増えています。
具体的な数字を挙げましょう。当時と現在では、◇(初出判明済み作品)と◆(初出不明作品)の数は以下のようになっています。
公開当初 ◇1009編 ◆158編
現在 ◇1178編 ◆24編
この数字は改題作品も別作品としてカウントされていますので、ご注意。総作品数はこの合計数より少ないわけです。