
星新一・星マリナ著/江坂遊編『スター・ワーズ
星新一の名言160選』樹立社(10)を読みました。
まずは、この本の大部分を占める星新一・名言集にざっと目を通しました。ほとんどは「どっかで読んだなあ」ですが、と同時に新鮮さも感じました。
157ページに採り上げられている「意中に羽翼を生じ筆下に風雲を起す」を読み、ふと思い出したことがあります。『スター・ワーズ』では割愛されていますが、出典である「香港・台湾占い旅行」(『きまぐれ体験紀行』に収録)には――
>これからは、色紙に「何か一筆」と強要されたら、これを書くとするか。

と書かれています。で、私の所持している『きまぐれ体験紀行』講談社(78)には、写真のサインが……。
もちろん、サインをいただくとき、すでに本は読んでいて、「ぜひ“意中に羽翼を生じ”を」とお願いしたのでした。言ってしまえば「強要」なわけですが、星さんは嫌な顔も見せず……。若気の至り(当時、私は21歳)とはいえ、なんて失礼なことを口にしたんだろうと、今さらながらに反省しております。
さて、巻末の「江坂遊のショートショート道場」です。
星新一の娘である星マリナが江坂遊のショートショート道場の門弟になるという趣向。――星マリナがショートショートを書き、それを江坂遊が添削指導するわけです。すべてはメールの遣り取りで行なわれ、臨場感あふれるものになっています。
正直に言いますと、『スター・ワーズ』の発刊を知って、最も楽しみにしていたのは星マリナのショートショートでした。星新一の血を受け継ぐ娘が書くショートショートなんですよ。
この本には星マリナのショートショートが3編収録されています。読む前は、「がっかりさせられるかも」との不安もあったんですが、一読して、そんな不安は一掃されました。というより、驚きました。
アイデア、プロット、文章。――失礼ながら、シロートとは思えません。3編とも、きっちりとしたショートショートなんですよね。
江坂遊とのメールの遣り取りも含め、本当に楽しませてもらいました。
以下、書くべきか迷ったんですが……。
第1作目「会話」には、また別の意味で驚かされました。
私は31年前にSF専門誌「奇想天外」で商業誌デビューをしました。ショートショート2編同時掲載という変則的なデビューでして、そのうちの1編が処女出版の表題にもなった「うるさい宇宙船」です。
星マリナの第1作(つまりデビュー作)である「会話」を読んだ瞬間、「うへえ」と思いました。何と言いましょうか、「うるさい宇宙船」と似ているのですよ。誤解のないように書いておきますが、盗作とか、そういうレベルのものではありません。着想の原点も全く違いますし、明らかに星マリナ独自の着想による作品なのですけれど、とにかく「似ている」のです。
しばし呆然。しかし、じわじわと嬉しさが込み上げてきましたね。
だって、そうではありませんか。31年という年月の隔たりはあるとはいえ、星さんの娘と私のデビュー作が似ている……。
まことに身勝手ながら、不思議な縁を感じてしまいました。――おっと。マリナさんも拙ブログを読まれているのでした。迷惑だったら、ごめんなさい、です。
最後に――
名言の「出典一覧」を眺め、気になる記載がありました。
>『地球から来た男』(共著)
共著? 皆さんご存じと思いますが、『地球から来た男』は星さん単独の著作で、共著ではありません。いったいどの本と勘違いしたのでしょうか。