もちろん、数は少ないものの、ショートショートのなかで起こった出来事も採り上げられています。数が少ないのは、もともと日付が明記されたショートショートが少ないからでしょう。
私自身の作品を思い返してみても、明確に日付を記したショートショートなんて、書いた覚えがありません。――などと思いつつ、ぱらぱらと冊子を眺めていましたら、ありゃりゃ。
>☆200X年12月10日
> おれはいそいそと(パソコン通信の)オフの集合
> 場所へと向かった。そこで運命の出会いが。
> 「異端の愛」高井信
こんな作品までチェックされているとは……。感動してしまいました。
とにかく、眺めているだけでも楽しい冊子です。石原さん、ありがとうございました。
さて。
いい機会ですから、石原さんとショートショートのことも書いておきます。
石原さんはショートショートを得意とする作家ではありませんが、それでも処女短編集『ハイウェイ惑星』ハヤカワSFシリーズ(67)に、なぜか1編だけ収録されていたショートショート「高い音低い音」をはじめ何編もの秀作を書かれています。(同タイトルの本はハヤカワ文庫JA(75)、徳間デュアル文庫(01)にもありますが、いずれにも「高い音低い音」は収録されていませんので、ご注意を。『画像文明』ハヤカワ文庫JA(76)に収録です)
石原さんのショートショートをまとめて読むには、『生きている海』ハヤカワSFシリーズ(70)/ハヤカワ文庫JA(77)が最適でしょう。全17編。3部構成で、「第二部 科学時代」には11編のショートショートが収録されています。なかでも「助かった三人」は石原さんの真骨頂と思います。
『生きている海』収録のショートショートと言えば……。
思い出したことがありますので、書いておきます。
『ショートショートの世界』で伏線の説明をしたとき、星新一の「親善キッス」を例に挙げました(166ページ~168ページ)。実は元原稿には、「親善キッス」から派生した話題も書いてあったのですが、あまりにも蛇足が過ぎると考え、単行本化にあたって削りました。
蛇足であるのは間違いないとはいえ、自分自身ではけっこう気に入っている箇所です。
ここで復活させておくことにします。続きを読む